作品情報
作者 脚本 田畑由秋 作画 余湖裕輝
出版社 秋田書店
掲載紙 少年チャンピオン
巻数 全18巻
あらすじ
21世紀初頭、日本の政治は破綻しているにもかかわらず、その原因となった政治家や官僚たちは責任を取ることなく甘い汁を吸い続けていた。そんなある日、大都銀行の相談役・岩崎昭三が「アクメツ」と名乗る仮面の男に殺された。それは1ヵ月にわたって日本を揺るがす一連の事件の始まりだった。
Wikipediaより引用
感想 解説 考察など
今回は異色の政治漫画、アクメツをご紹介します!
他の漫画とは違ったアプローチで描く政治漫画!
物理的に悪徳政治家をぶっ倒す世直しヒーロー漫画です!
前回ご紹介したウルフガイと同じ、田畑由秋先生が原作、作画は余湖裕輝先生のタッグです!
ウルフガイの記事はこちら!↓
この漫画は2002年から2006年までの今から20~15年以上前に連載された作品ですが、現代でも通ずる政治をテーマにした作品になっています。
国債垂れ流しや警察腐敗、道路利権、薬害問題、年金使い込み問題、天下りなどの政治腐敗を一刀両断!
今作では現代社会を舞台に、悪の仮面のヒーロー、アクメツが腐敗した政界や官僚を正す漫画になっています。
ただその正す方法が、まさかの物理的にぶっ殺すという過激な内容!笑
貸し剥がし、貸し渋りを繰り返す銀行天下り議員を斧で一刀両断、腐敗した警察庁に対して死のペナルティ、道路族の議員はそのまま工事中の高速道路に生き埋めに、薬害問題を起こした元厚生省の事務次官に肝炎ウイルス入りの血液製剤を注入、議員年金をもらいながら天下りを繰り返し多額の対処金を受け取る元議員をさらし首に!
他にも書ききれないほどの腐敗政治家、官僚をバンバンぶっ殺していきます。
これが悪を滅する、アクメツという行為です。
これらの行為は武力にて政治的要求を通すテロとして一般市民には忌み嫌われるものです。
しかしアクメツはその一刀両断っぷりを国民に認められていきます。
それはなぜかと言うと、通常のテロと違い、アクメツはターゲットになる政治家や役人しか殺しません。
他の人を巻き添えに殺したりはしないというポリシーを持って暗殺を実行します。
またテロを起こした後は自殺する事により自らを断罪します。
一人一殺。もしくは多人一殺の主義の下、悪だけを殺していく姿にいつの間にか国民はアクメツを支持するようになります。
しかもその暗殺の様子をテレビにてバラエティー番組風に生中継する為メディアのコントロールもしっかり行っています。
死ぬ前に議員にファイナルアンサーを行うなど時代を感じるバラエティー要素(殺す前に最後の問いなのでホントのファイナルアンサー笑)
なんどでも蘇り、同じ時間帯に同時に現れるアクメツ
上記の通り、アクメツは政治家や役人などの悪人を殺す際、最後には自身も死んでその行為を自ら罰します。
なので毎回死にます。
それなのに同じアクメツがなんども現れ、しかも場合によっては同じ時間帯に複数のアクメツが現れます。
しかもその全員が同じ顔。
一人の政治家を殺すために80人近いアクメツが現れたりします。
アクメツは同じ時間帯に複数の場所に同時に現れる能力を持っていると本人は語っています。
作中、アクメツの行動に感化され、偽アクメツが現れますが、上記の通り、アクメツ後必ず自身は死ぬ事、ターゲット以外は殺さないという誓いによって偽アクメツとの差別化しています。
また信念なきアクメツに対しては本物が現れてアクメツされちゃいます!
知られざるアクメツの能力!
アクメツはただ殺すだけではなく、その他の能力も超人じみています。
まず戦闘能力。
あらゆる格闘技を身に着けているだけではなく、銃火器の扱いなども長けています。
また死んでも蘇る為、銃で撃たれようが簡単には倒れません。
また情報収集能力。
政治家の隠れた不正や収賄なども見抜き、また総理官邸まで忍び込む隠密性も持ち合わせています。
他には神懸かり的なドライビングテクニック、医者としての能力、プロの板前の能力、敏腕テレビマンの能力などありとあらゆる能力を持って、それらをフルに使い、次々と不可能と思われる暗殺を成し遂げます。
ここから先はネタバレを含むのでご注意!
アクメツの正体、不死身の真相は!?
なんどでも蘇り、同時に複数存在できる超人、アクメツの正体は高校生、迫間生のクローンでした。
しかも成長速度もコントロールでき、大人のクローンを一週間作る事ができます。
その為死んでも新たなクローンが現れ不死身のヒーローとして振舞います。
また、アクメツは着用している仮面に秘密があり、脳内の記憶や能力を死ぬ際に、宇宙にあるデータベースに保存し、他のアクメツと統合する事ができます。
そのおかげで各地に散らばるアクメツのクローンがそれぞれ特殊技能を習得すると、アクメツ全員にそれらの能力が身に着く為、あらゆる分野のプロフェッショナルとなります。
つまり死ねば死ぬほど能力が増えどんどんバージョンアップされています。
なぜそんなクローンが生まれたかというと、戦後に闇市、ブラックマーケットなどでのし上がり、闇社会の頂点に立った極悪人、神宮路寛と言われる老人が発端でした。
悪の黒幕である神宮路寛は持てる財産の全てを使い、自身のクローンを作り、また自身の記憶や人格をそのクローンに移植する事によって新しい身体を手に入れようとし、ついに完成させてしまいます。
また各地に自身のクローンを派遣し様々な科学、医学、軍人、格闘家などの専門家、職種につかせ、それらを能力、記憶の統合能力を使い、あらゆる分野に精通したパーフェクトな超人になろうとしました。
しかし統合第一号の通称パーフェクトワンは人格の移植に不具合があり、悪の心を持ちませんでした。
そしてパーフェクトワンは神宮路寛を倒すため、世界中の神宮路寛の支部を破壊し、ついには巨悪、神宮路寛を倒しました。
しかし傷を負いすぎたパーフェクトワンは間もなく死んでしまいます。
その後クローンプラントにいた他のクローンは各地に生(しょう)と名付けられ里子として出され一般社会に溶け込んでいきました。もちろん極悪人、神宮路寛の記憶がない状態で。
アクメツはそれらのクローンの生たちが偶然街中で出会い、自身のクローンがいると判明し、ついにはクローンプラントを発見しその能力を知ったのでした。
アクメツの動機は?
各地に散らばるクローンの一人、新倉生。
アクメツの動機は彼の親友の死が発端でした。
新倉生の同級生の桂木慧一は生まれつき無フィブリノゲン血症という難病を患っており、フィブリノゲン製剤を投与しないと生きていけません。
しかしこのフィブリノゲン製剤は生きた人間の血液を使って作る為、肝炎ウイルスが混入されるリスクが高いものでした。
かつて日本では止血剤として広く使われていましたが、その危険な製法の為、多くの人がウイルス性肝炎を発症し海外では1977年、早急に使用を中止したのですが、日本ではなんとその危険性を知られながら1988年まで厚労省の怠慢により使用が継続されていました。
この問題は現代でも実際にあったものであり、今でもテレビなどで薬害C型肝炎の訴訟などのCMが流れていますね。
そんな製剤を打っていた桂木は、高校生という若さでC型肝炎になり、それが悪化し肝ガンを発症しており、いつ死んでもおかしくない身体になってしまっています。
日に日に弱っていく桂木を見た新倉生は、偶然自身の他のクローンに会い、そのクローンプラントの存在を知りました。
このクローンプラントと記憶の移植技術を使えば桂木は助けられるかもしれないと、他の生たちと協力し、なんとか桂木のクローンを作ろうと奮闘しますが、残念ながらなんども挑戦しますが他人のクローンの成功はできません。
そしてついにクローンが間に合わず桂木は死んでしまいます…
クローンプラントは神宮路寛にのみ最適化されている為、他人の桂木のクローンは作る事ができませんでした。
失意の中の新倉生は考えました。
桂木のような人を救うにはどうしたらいいのか。
またそのような犠牲者を出した役人や政治家にどう復讐するか。
それには自身たちの力。クローン技術と記憶と技術の統合による超人化。
そして悪人をトップからどんどん殺し、日本という国に消えないくさびを打ち込むと誓ったのです。
あえてテロを行うと。
他の生たちも賛同し全ての生の記憶と能力を統合、同時にあらゆる場所に存在し、永遠に生き続ける超人となり世界を変える決意をします。
すべての生が統合されたver.1といて生まれ変わります。
そして桂木だけではなく他の生の周りにいた、腐敗した政治や官僚により悲惨な結末を迎えた人達の為立ち上がります。
アクメツの最後は?
国内の悪徳政治家、官僚たちを文字通り皆殺しにしたアクメツ。
しかし、悪が一掃された事により空いたポジションに新たな悪が座ろうとします。
それはヤクザと右翼と2世議員たちです。
彼らはアクメツにより国の中枢がマヒしたこのタイミングでクーデターを起こし、国を乗っ取ろうとします。
アクメツはこの新たに居座ろうとする巨悪に対して、日本が立ち上がり戦う事を期待して静観を決めるつもりでしたが、ヤクザたちが迫間生の学校に立てこもり、生徒たちを人質にアクメツのクローン技術を寄こせよ要求してきました。
この事態を受けアクメツは、静観をやめ、再び巨悪と戦う事を選びます。
人質解放の為にアクメツはクローンプラントの場所を教えますが、警察と協力しアクメツは反撃に出ます。
それと同時にテレビを通じて自身の正体を明かし、クローンプラントの事も世間に打ち明けます。
そして自身は総理と約束した1か月後、プラントも爆破し、すべてのクローンたちも死ぬことで自身をアクメツすると発表します。
1か月ではアクメツの日本中の悪を倒すというマニフェストは達成できないと観越し、最初から滅ぶ事を決めていたのです。
アクメツは自らの死後の世にくさびを残します。
アクメツはあってはならない。
しかし国を動かす者は決してアクメツを忘れてはいけない。
いつだって国家の中枢にいるものは再びアクメツを生まないようにどんな失敗にも責任を取らなければならないリスクがあると。
そして最後のアクメツである迫間生はヒロイン長澤を連れて隠してあったもう一つのクローンプラントにて自ら死に養分となり、長澤を生き返らせ自ら滅します。
神宮寺だけではなく他の人のクローンも完璧に作れるように桂木の死後も研究を続けていたのでした。
そしてラストシーンはそれから10年後。
アナウンサーになった長澤が現在はホームレスになってしまった元総理大臣の村瀬にインタビューを行う所で物語は終わります。
評価 既存の政治漫画にない切り口! 今まで政治に興味がなかった人もこれで日本の現状の一端が見えるかも? SF、政治、バイオレンスが絡み合う傑作! 86点