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【漫画】狂四郎2030 解説 感想 考察 ネタバレありとなしどちらも ラストは賛否両論? 96点

Amazonより引用

作品情報

作者 徳弘 正也
出版社 集英社
掲載紙 スーパージャンプ
巻数 全20巻

今回はこのサイトで初めての漫画作品の紹介です!
一応画ブログのコンセプトである良いものを紹介するという意味で今作は皆さんに良さを伝えたいという意味でぴったりです!

ネット界隈では有名な画像が良く知られており、作品の一場面は見たことあるけど中身はよく知らないという方が多いのではないでしょうか?
それだけでは非常にもったいないので、今回はあらすじや簡単な解説や感想を交えて紹介していきます!

こちらも徳弘正也の作品です!

あらすじ

第三次世界大戦後の西暦2030年の日本が舞台。一党独裁の管理国家になった日本は国民のほとんどが男女隔離政策の中奴隷のように強制労働をさせられ国家に搾取されていた。

主人公の廻 狂四郎は元軍人で今は治安警察巡査として敗残兵狩りと呼ばれる過酷な任務に就いていた。そんな狂四郎の唯一の楽しみは国より国民に配布されるバーチャルマシンによって描かれる架空の江戸時代の日本にいる志乃との逢瀬だった。
国民のほぼ全員が、夫婦であっても親子であっても男女隔離政策の中強制的に分断され、唯一の娯楽は国家から真面目に働く奴隷にのみ与えられるバーチャルマシンによるバーチャSEXだけであった。

しかし狂四郎はある悩みによって志乃と出会ってから一度もSEXすることができなかった。なぜか志乃を前にするとEDになってしまうのだ。

そんな中ある日パトロール中に謎の老人と犬が揉み合っているいる所に遭遇し、老人は死んでしまったが生き残った犬バベンスキーと運命的な出会いを果たす。
なんとバベンスキーは人語を喋る上に天才遺伝子学者の脳を移植された天才犬であった。

そんな天才犬バベンスキーの協力もあり遂にバーチャル世界で初めて志乃と結ばれる狂四郎。
しかし違和感を感じたバベンスキーがバーチャルマシーンを統括する電子サーバー飛鳥をハッキングし調べた所、志乃は実在する事がわかった。

志乃こと小松由利加(ユリカ)は北海道にある中央電子管理センターでプログラマーとして働きながら偶然見かけた狂四郎に興味を持ちバーチャル世界の住人として狂四郎に近づいたのであった。

バベンスキーからこの事実を聞いた狂四郎はおよそ生きては帰れない事を感じつつもひそかに志乃を救出する為に命を懸けて北海道へとバベンスキーと共に過酷な旅に出た。

感想 解説

まずはネタバレなしの感想、解説です。
あらすじだけをざっと見てもらうと近未来ディストピアものロミオとジュリエットのような悲恋劇っぽい感じですが間違ってはいません。しかし他の似たような設定の作品と圧倒的に違う部分があります。
それはエ〇グロギャグ全開という所です!

設定は非常に重く、バイオレンス描写も盛り沢山で内容の非常に濃い重い漫画ですが徳弘正也漫画ではおなじみのキレキレのギャグによってテンポよく読める作品になっています!
ド下ネタの比重高めですが…笑

もはや職業病なのかギャグを挟まないと死んでしまう病にかかってしまっているのかどんなシリアスなシーンでもギャグをぶっこんできます。
これがつまんないギャグだったりするとダレるしテンポが悪くなってしまい本筋も微妙になってしまうのですが徳弘先生の場合は違います!
このギャグのおかげで暗くなりすぎない良いバランスをとっています。

エロシーンも少年誌から青年誌に移ったこともあり描写がえげつないですね。
ほぼ毎話SEXシーンがありますね。
しかしただエロいっていうわけではなく物語を語る上では外せない要素になっています。
単純な恋愛物ではなく人間の尊厳や愛などを描こうとするには性描写は欠かせません。
そこをぼかさずに描写しきったこの作品は恋愛物として非常にレベルが高いです。
ましてや死と隣り合わせの毎日を送る狂四郎とユリカにとってはなくてはならない絆の照明です。

そしてバイオレンス描写ですね。これも徹底的にやりすぎてるくらいの悲惨さです。
グロさを売りにしている漫画では一切ないです。直接的な人体破損描写や内臓ドロりみたな描写がエグイというよりはもっと人間の醜い所、汚い所、集団心理が生む人の残酷さなどが遺憾なく表現されています。

ネットではこの「おかわりもいいぞ!」有名なカレーライスのシーンが有名ですね。ほんの少しネタバレを含むので知りたくない方は 以上ネタバレ箇所終了 まで飛ばしてください。

狂四郎 第5巻より引用

これは狂四郎が少年兵育成の為の施設で暮らしていた頃のエピソードで、厳しい育成施設では成績優秀者が優遇され、能力の劣る劣等生は満足に食事にもありつけない状況の中、突然全員にごちそうであるカレーライスが振舞われ、狂四郎達の友人の宇治田がお腹いっぱいカレーライスを食べられる事に驚き感激しているシーンです。

もちろんそんな幸せエピソードではなく悲惨なオチが待っています…

実はこれは嘔吐ガスに耐えるための訓練の前処置で、いっぱいカレーライスを食べたものほど苦しむという残酷な訓練です。
宇治田は体力もなくこの訓練のせいで吐しゃ物にまみれ死んでしまい狂四郎がこの施設からの脱走を試みる切っ掛けとなったエピソードです。

しかし脱走して街に逃げ延びたとしても更なる地獄が待っています。

以上ネタバレ箇所終了

 

 

こんな暗いエピソードは序の口で他にもいっぱい悲惨なエピソードが盛り沢山です。
狂四郎だけではなく登場人物の多くが国家や一部の権力者に翻弄され不幸になっています。

狂四郎の他の過去のエピソードや志乃ことユリカの過去のエピソードも悲惨なものばかりです。
基本的に救いはありません。

しかし唯一の希望として狂四郎とユリカのお互いを愛し求め合う事だけが二人を結びつけます。

他にも魅力的なサブキャラがたくさんいます。
遺伝子操作で生み出された完璧な人間八木少将、狂四郎と共に過酷な施設時代を過ごし実力があるが優しい心の為人を殺せなく落ちぶれてしまった白鳥、子供を男たちの魔の手から守る為自ら身体を差し出すアザミ、父親であり日本を独裁支配する男二条憲政の息子でありながら処刑した人の亡霊の幻影におびえ自分だけの理想郷を作り上げようとする二条ひかるなど個性的なキャラがそろっています。
それぞれのエピソードも後味の悪い物やわずかな希望が見いだされるものなどさまざまです。

時代背景も世界恐慌を発端にした第三次世界大戦後で大国は滅び残った国々は軍備拡張の元人権を無視したディストピアで、遺伝子技術という魔法の杖を手にした醜い権力者たちのエゴとそれに踊らされる愚かな民衆たちによる民主主義の崩壊後という世界です。

遺伝子解析技術が進化し人間の情動行動などを司るM型遺伝子の発見により不確かな科学的根拠を振りかざし差別を煽り独裁国家へと道を誤り戦争に向かっていくという設定は今作が発表された1997年であることを考えると作者の先見性は目を見張るものがありますね。

現実の世界でも優生学などを悪用した独裁国家もありましたしフィクションの世界だと片づけられない恐ろしさがあります。

読み終わった人向けの感想

※ここからは読み終わった人に向けてがっつりネタバレ込みで書いていきますので未読の方は注意※

まず読み終わった後誰もが思うと思われる疑問についてですが。

本作は打ち切りだったのか?という点についてです。

これについてはネットでは賛否両論ですが個人的な見解では打ち切りではないと思われます。
そもそも連載当時でもこの漫画の評価は高かったですからね。
あのような終わり方は本書のあとがきにもあるように必然であったのではないでしょうか?
今作の骨子は狂四郎とユリカが実際に出会い二人で生きていくという所で物語は終わりなんです。
たしかにその後の世界は見てみたいですよ!
狂四郎とユリカとバベンスキーがどのようにしてあの過酷な独裁国家の中で生きていくのかは見てみたいですし、白鳥マイカがその後どうなったとか無明光明のその後とかアザミが脱出後どうなったかとかアルカディアのその後とか色々書ききれないほどです。

しかし作者の言う通りそれらは蛇足になってしまうと思います。
二人が出会った所で二人の物語は終わりなんです。
その後どんな事があろうとも二人は力を合わせ(バベンスキーも)困難を乗り越え幸せな家庭を築くでしょう。これ以上悲惨な目にはあってほしくないという願いもあります。

しかし欲を言えば二人が揃って北海道を脱出して子供が生まれたみたいなエピローグは欲しかったですねー。

他には二条政権打倒が見たかったという意見も多く見ますがそれについてもあとがきの通り狂四郎一人ではどうにもならないというのがホントの所でしょう。バベンスキーが持ち出したコンピュータウイルスなどもそれの伏線っぽい感じでした。

しかし一個人で国家体制を変えることなどはやはり不可能です。人一人が守れる幸せなど妻と子供くらいです。それ以上になるとこの物語の本筋や伝えたかった事がぶれてしまう気がします。

後は未回収っぽい伏線についてよく言われる八角博士がひそかに開発していたタイムマシーンについてです。

これはもしかしたら二人で平和な時代にタイムスリップして平和に暮らすエンドもあったのかもしれません。しかしこんな時代だからこそ愛を貫いた二人が過酷な時代を生き抜いていくというテーマから外れてしまいかねない展開なのであえて作者は選ばなかった結末だと思いますね。

作者の迷いもしくはミスリード、あえて謎を残したのかもしれませんね。

考察や想像の余地があるのも名作の条件な気がします。

総評

以上で簡単な感想と解説でした。
本作は漫画好きの間では今更かよって思われるほど有名な漫画ですが一般層にはまだまだマニアックな部類に入る漫画だと思います。なので名前やカレーのシーンだけ知っているという人にはしっかり読んでもらいたいと思い記事を書こうと思いました。
今作の作者、徳弘正也先生は他にもジャングルの王者ターちゃんふぐマン黄門様~助さんの憂鬱~亭主元気で犬がいいなどあまり有名ではないかもしれませんが外れがない鉄板漫画作家です!是非皆さまに読んでもらいたいのでまた他の漫画についても記事を書きたいと思います。

ちなみに徳弘正也先生の過去のアシスタントにはワンピースで超有名な尾田栄一郎先生がいらっしゃいます。ターちゃんのおまけ漫画にも出てくるので有名ですね。
ワンピースも王道冒険ストーリーの中にもギャグを入れる所が受け継がれていますね。
下ネタはないけど笑

狂四郎が面白かった方は同じ徳弘正也先生作品のこちらもオススメなので是非こちらの記事も見てみてください!

電子書籍はこちら↓

あうあう

近未来SF冒険SEXYバイオレンスラブロマンスせ〇ずりコメディち〇こ漫画!
↑作者自身がつけた本作のキャッチコピーです笑
ふざけた文ですが間違ってはないですが超名作です!
作者の他の漫画含めて多くの人に是非見てもらいたいですね。
他に類を見ない不朽の名作! 96点

今回は初めての漫画記事の為書き方はまだまだ模索中ですがこれからもどんどん映画、漫画、画期的な物についてどんどん紹介していきます!

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