作品解説
監督 三笠 大地
公開 2020年10月29日(Amazonプライムビデオ)
上映時間 86分
あらすじ
実話を元にした長編映画。密室に閉じ込められた男女六名が「男と女、どちらが悪いか」で激論を交わす。悪いと決められたほうは死刑――。事前に行われた一般モニターでは賛否両論巻き起こり、意見は一つとして重ならなかった。果たしてあなたは、男と女、どちらが悪いと思いますか?
Amzonプライムビデオより引用
キャスト
- 江藤啓介 久保宏貴
- 緋村紗津美 風谷南友
- 哲学者 みやたに
- 委員長 ばんこく
- ジャイアン 阿部隼人
- フェミ 大藤由佳
- 無関心 斎藤瑞暉
- リス 江田來花
感想 解説 見どころ
今回はあまり普段拝見する事が少ないアマプラオリジナル映画を紹介します!
Twitterで知り合った方におすすめされ、見てみたら面白かったので皆さまにも是非見て頂きたいですね。
今作は今年の春ごろに劇場公開を予定していたようですが、緊急事態宣言発令等もありAmzonプライムビデオでの配信となった作品です。
あの時期は今より外出がより難しく、見たい映画があっても劇場に足を運べない辛い時期でしたね…
Amazonプライム会員なら無料でおうちで観れるのでいい時代です!
今作のテーマについて
今作は男女差別がテーマの一作です。昨今、ジェンダーフリーやMeToo運動、古くからだと男女平等参画社会など何かと話題になるテーマですね。しかしこの世は男と女と分けられる世界(生物学的に)な為、議論は尽きないテーマです。
雰囲気としてはサスペンス映画っぽい感じですが、男女差別について一石を投じるような社会風刺的な映画かな。
作品内にも随所に現れているので解説していきます。
閉じ込められた男女6人
今作は密室系の映画で舞台はワンルームのアパート。目が覚めたら見知らぬ男女6人集められており、洗脳か何かにより外に出る事ができないといったシチュエーションです。(ガンツのマンション的な感じ)
登場人物はどれも個性的で男性3人女性3人それぞれ特徴を持っています。
暴力的で結論を急ぐ男、物事を俯瞰して哲学的に考える男、無関心な男。
男性差別発言を繰り返すいわゆるこじらせたフェミニストの女、冷静に判断する委員長タイプの女、周りに気を使いおびえ意見を言えない小動物系の女。
極端なデフォルメされたキャラ達でちょっと現実味がない感じ。
男女の良いところ悪いところをより分かりやすくしたキャラクターですね。
この男女6人達で、ある事件にかかわる男と女、どちらが悪いかについて話し合い全員一致になるまで議論し結論を出さないと全員殺されてしまうというのが基本設定です。
断片的な記憶の再生、トリガーによって徐々に明らかになるルールや事実
密室内の6人が閉じ込められている部屋の中で物に触れたり、特定の行動をとったりすると、それが”トリガー”となり事件の記憶や事実が徐々に明らかになっていくという設定で物語が進んでいきます。
時系列も前後したりで少しわかりずらいのが難点ですが、最後まで見るとしっかり時系列順に顛末が分かるようになっているので鑑賞中はあまり気にせず6人と一緒に真相を予想しながら見るのがオススメですね。
ここから先はネタバレを含むので未視聴の方は注意!
監督江藤と女優紗津美について
密室にいる6人の議論の対象となる男と女。映画監督の江藤と主演女優の紗津美についてのパートについて解説していきます。
まず最初に明かされる事実として江藤が紗津美をストーカーし、監禁しているという事が明かされます。この時点では女性の紗津美は完全に被害者として描かれ、男性の江藤は悪者とみられます。
そりゃそうだろなって感じです。
しかしトリガーにより徐々に記憶が再生されていくと紗津美は女優なのに監督のいう事も聞かず遅刻、勝手な衣装チェンジ、そもそも演技が低レベル。挙句に枕営業しまくりという嫌な女だったという事が明かされます。
最終的には主演女優なのに自分勝手な理由により撮影中にばっくれて公開中止に。
こいつも悪い奴だなと違った見方もできるようになります。
まず考えさせられる事として最初の事実、”女性が男性に監禁されている”という点だけ見ると不思議と男性が悪い奴なんだなと思いがちですが、逆にもし”男性が女性に監禁されている”となると「男が悪いことしたのかな?」、「なんらかの理由があり監禁せざる負えない状況なのかな?」と他の可能性を、つい考えがちかもしれません。
僕自身男性ですがこのような考えを持ちました。
男女にかかわらずなんとなく同じように無意識に考える人が多いのではないでしょうか?
その後徐々に紗津美の悪い部分について描かれるにつれ、江藤が監禁するに至ってしまうのもわからなくもないと思う人も出てくると思います。良い事ではないけど。
そこをどう思うかについても見た人に考えてもらいたいのではないかなと思います。
男女6人の正体について
密室に閉じ込められた素性の知れない男女6人の正体は、映画監督江藤の意識の中にいる別人格でした。江藤が最終的に結論を下す為の思考を決議という形でデフォルメした表現ですね。
それぞれ作中で名前は明かされませんがスタッフロールにてそれぞれの性質に基づいたものになっています。フェミとかジャイアンは作中でも出てきましたね。実は本名なんかないんです。
一方であくまで私が感じた内容ですが、この一室は世の中の男女社会の縮図にも見えます。
ジャイアンは男性の粗暴でな一面、哲学者のように周りを見て冷静に判断する性質、物事に積極的に関わりを持とうとしない無関心。
フェミはヒステリックで被害者意識の高いいわゆる極端でフェミニスト的な女尊男卑的な一面、委員長のようにルールを重んじる一面、リスのように周りに対して消極的すぎてなにも思ったことを言えない女性の一面などそれぞれ男女がお互いに持つ偏見を表していると感じます。
実際にキャラクターたちのように極端な性質の人間はなかなかいませんが江藤の中にあるそれぞれの人格、男性たちは自身の中にある男性像、女性たちは自身の考える女性像を表しているのではないでしょうか。もちろんこれらは江藤の中にある考えで私たち視聴者側にもそれぞれに江藤とは異なった内なる男女6人がいるかと思います。
作中では江藤は統合失調症で多重人格と語られていますが、誰しもが持ちうる男女の偏見とも見れます。
もっとも消極的なリスが最初に死んでしまうのも、現実社会では消極的な女性の意見が殺されてしまう事を表しているのではないでしょうか?
そして最後に決断を下す哲学者。これは江藤自身が男性であり最終的に選んだ自身の性質だという事を示していると考えます。
議論という形で行われる脳内会議、結局は自身の男性的な一面の中でもっと色濃い哲学者的な一面が残ったという帰結を視聴者に見せているのかと思います。
紗津美を襲うシーンに狼の顔をした男性と醜い豚の顔をした女性。
これは醜い男女の争いを端的に表しているのかなと感じたシーンでした。
ラストについての個人的な考察
江藤の決断はまだしも、紗津美の最後の選択についてマジかよ!っとなる結末でしたね。
最後の紗津美の行動については賛否両論あるかと思います。
多くの人にとって予想、期待した結末ではないかもしれませんがこれも、男女に対して我々がこうなって欲しい、紗津美や江藤の下した選択に対してこうであって欲しいと無意識に押し付けている偏見とも言えます。
男性には強くあって欲しい、女性には優しく情をくんで欲しい。
それらを裏切る結果は現実の非常さと自身の無意識下にあるエゴを垣間見た気がします。
そして最後のモノローグ、”本作は実際の男女問題に基づいている”、”本作を理解できたという人は、なにも理解できていない”、”理解されるべきではなく、理解されない世の中であることを願っている”
これらは男女間にある絶対的な違いがあり、それぞれ男性、女性どちらもお互いのことは真に理解する事はできないし理解した気になった時点で偏見を押し付ける事になりそれも間違っている。(LGBTの方だとしても自身の持つ性意識以外についてはやはり完璧には理解できない)
理解されない世の中になってほしいとは男女間にある偏見、男尊女卑、女尊男卑が本当になくなった世界の実現を願っての製作者からのメッセージではないでしょうか?
もちろん私のこの考察も全くまと外れかもしれませんが。
今作のジャンルはホラー、サスペンスとして紹介されがちですがジェンダー問題に一石を投じる社会派映画な気がします。
見た人それぞれ、もしくは男と女、感想は異なると思います。
是非見た人の感想が気になる作品ですね。
多くの人に見てもらいたい一作です! 59点
Amazonプライムビデオオリジナル作品の映画ってあまり見たことがなかったのですが良作がいっぱいありそうですね。 オススメの作品があれば是非教えてもらえると嬉しいです!
まだAmazonプライム会員ではない方は30日間無料体験キャンペーンがオススメです!
登録はこちらから↓