久保の葛藤
クラウドたちの手はついに久保の交友関係にまで伸びていました。
B4Mのメンバーの一人はクラウドたちの性接待を餌に懐柔され、久保がスキャッターとしての活動をしないとぶっかけ魔であることをばらすと脅迫してきたため仕方なくついに遊佐とともにスキャッターの活動を開始しました。
しかしその特異な活動の為、久保は勃つ事ができず失敗ばかりを繰り返していました。
どうしても罪悪感があり、行為を果たせません。
なんどもチャレンジしますがどうしても罪悪感に苛まれ仕事を全うできません。
そんな久保に対してクラウドの使者が現れます。
そのクラウドはビッチと名乗り手を握っただけで男を射精させる能力を持っていました。
ビッチは沢田との関係に気づき、沢田を守りたいのであればスキャッターとして勤めを果たせと迫ります。
沢田の為に久保は覚悟を決め、ついにスキャッターとしての仕事を始めて完遂します。
仕事をこなしていくうちに荒む久保に対して遊佐がある事実を告げます。
クラウドの弱点
遊佐と久保の住む家には盗聴器があるので遊佐は筆談で久保にある事を示します。
それは家の軒下にクラウドの死体が隠されていたのです。
遊佐がいうにはその死体は、クラウドの中でも突然変異の出来損ないで、生殖能力のないクラウドの中でも異質の勃起するという力を持っていました。
しかし知能指数が低い出来損ないという事でクラウドの組織から追い出されたとの事。
その出来損ないは生殖能力がないはずなのに勃つ事が苦しい、自慰をしても射精できずにいるのが耐えられない。
クラウドの誕生が人間の精子によって阻止されるのであれば、自身の苦しみを解放する鍵があるのではと遊佐のもとを訪ねてきたそうです。
スキャッターとしての使命を全うする為に妻も生まれるはずの子供すらも捨てた遊佐は自暴自棄になり、その出来損ないの前で射精をしてあげる事に。
そして射精をし、その精子が出来損ないにかかった瞬間、その身体は溶けだし苦しみ出来損ないは死んでしまいました。
そう、クラウドの弱点は人間の精子だったのです。
これはクラウドにも他の仲間にも打ち明けていない遊佐の秘密でした。
俺たちはただのクラウドの奴隷じゃない。やろうと思えばやれるんだという事を久保に打ち明ける遊佐。
しかしその話の後突如家にビッチがおり、それらの話を聞いていたそうです。
だがビッチはそのことを組織に伝える事なく、遊佐と久保に死体の始末をするようにだけ指示を出して消えます。
なぜビッチがその話を上にあげないか謎のままでした。
また任務をこなす久保。淡々とこなす久保でしたが、遊佐には不穏な動きが。
突如遊佐の仲間である女性キョンが暴行され遊佐の家の前に投げ込まれました。
実は遊佐は久保のスキャッターとしての仕事を辞めさせてほしいとビッチに懇願し、その様子をクラウドたちに見られてしまったようです。
そのような遊佐の動きを許さないクラウドたちが遂に直接的な圧力をかけてきたのでした。
久保に対するクラウドからの教育的指導
久保と遊佐に対してスキャッターとしての意識に欠けるとして、クラウドから新たな使者が送られてきました。
飯浪剛と名乗るクラウドは突如遊佐の家に現れ、家を改修させていました。
飯浪は遊佐と久保がさらに従順で効率的にスキャッターの任務をこなせるように、トレーナーとして送り込まれたのでした。
そこは完全なる管理生活。遊佐は牢に入れられ久保は食事から筋力トレーニングまで全てを管理される生活。
また事あるごとに遊佐を痛めつける事を久保に強います。
洗脳されていく久保ですが沢田の事は常に気にかけていました。
日々任務をこなしながら沢田を守ろうとしていたのです。
遊佐を痛めつけた報酬として沢田と再会。何か身に危険が迫っている事を感じた沢田に対して久保は自分が守るからと言って去っていくのでした。
厳しい指導と筋トレ、食事管理、暴力による洗脳により久保はどんどん逞しく肉体的精神的に成長していきます。
ビッチの過去
そんなストイックな生活を送る久保にビッチから接触と提案がありました。
その提案とは久保とビッチの二人でクラウドにテロを仕掛けないかという内容でした。
ビッチはその特殊能力以外に他のクラウドとは違う所があります。
それは母親に愛情を持っていた事です。
しかし組織からすると不要な感情。
クラウドの組織で一員になる為に教育を受けていたビッチですが最後の儀式で実の母親を組織に殺された過去がありました。
それから感情をなくしてしまったビッチですが、ある時一人の男性にナンパされ一夜を共にすることに。
そこで痛みと共に初めてクラウドの弱点が精液である事を知ります。
そしてそれを利用してクラウドたちに復讐する事を決意したのでした。
このシーンはクラウドの非人道的な面を嫌と言うほど描いたものでしたね。
その話を聞いた久保はある決意をします。
遊佐の死と久保の覚醒
ついに度重なる暴行で遊佐は死にかけ。
そんな時、沢田が久保のもとに訪ねてきました。
ついにこと切れた遊佐の死をきっかけに久保は飯浪に反抗する事に。
沢田を守る為飯浪に精液をかけ殺します。
全てを沢田に打ち明けた久保。
沢田はそこで久保が今まで守ってくれていた事を知り、ついに二人は結ばれることに。
これで久保は”誰か”ではなく自分にとってたった一人のかけがえのない”あなた”を見つけたのでした。
ずっと中に居たいですと初めて女性と久保が結ばれた瞬間でした。
誰かにぶっかける事でしか女性と接する事ができなかった久保でしたがついに肌と肌を触れ合う事ができたのです。
ビッチが現れ、飯浪の死体の処理の指示を出します。
そんな中久保はかつて公園で沢田にぶっかけたのは自分だと打ち明けます。
それを聞いた沢田も全てすんなりというわけではないですがそんな久保を受け止めてあげます。
その時久保には新たな力が覚醒しました。
それは宇宙にある霊魂の声を聴くことができる能力です。
今までは遊佐の仲間、キョンにしかできない事でしたが久保が覚醒しその声をとらえる事ができるようになったのです。
その声の主は、遊佐の元仲間が飼っていたハナという女性漫画家の犬を孕ませたジェフという犬を通じて久保達に接触してきたのです。
ジェフを通じて声をかけてきたのは霊界でも異端な反抗者たちだったのです。
久保達のバカげた闘いに乗ってくれたマイノリティーでした。
ついに対決!クラウドの巣へ
クラウドたちはついに人口削減の為の禁断の技術を開発してしまったのでした。
男性の性機能を減退、破壊し女性を不妊にさせる食物の種子が完成したのです。
その種子はあらゆる過酷な環境にも耐え安価で栽培も容易、小麦、大豆、トウモロコシ、米にまでなるというまさに夢のような食物。
クラウドたちは農業を大企業による一元管理、各国政府には特定の種子だけを栽培するシステムを構築。
人類の大削減は確定的になりました。
そんな発明を記念してクラウドとそれに与する人間側の政治家、要人たちを招いてパーティが開催される事になりました。
その宴は酒池肉林の乱痴気騒ぎ。生贄を殺し血を浴びる儀式なども行われる魔のパーティ。
そんな中にビッチと久保は正面切って戦いを挑みます。
沢田との愛で武装した久保とビッチの闘いが始まります。
にしてもこのパーティに参加する面々が悪意に満ちています笑
小泉進次〇や秋〇康にそっくりなキャラが笑
闘いの果てに
覚醒した久保とビッチは多くの敵を倒しながらクラウドのボスがいる部屋に向かいます。
決して開くことのないドアで守られていたクラウドの幹部連中でしたが、霊界と繋がった犬、ジェフの力によりその扉を開いた久保とビッチは捨て身の覚悟で踏み込んでいきます。
そしてそのパーティ会場にクラウドたちが呼びつけた米軍特殊部隊の乗ったヘリが突っ込みビッチと久保の闘いは終わります。
場面は変わって久保の家の前。
かつてのB4Mのメンバーが集まり死んだ久保を思い集まっていました。
B4Mは久保が国際的テロ犯という事にされた為、公安にマークされかつての女性と決別というスローガンもなくなり、ボーイズフォーメイクラブと宗旨替えしていたようです。
そこには沢田も参加し亡き久保に献杯するのでした。
そしてまた場面は変わり沢田は担当漫画家の羽鳥に誤植三か所の罰ゲームとして渋谷のハロウィンの最中仮装している人に罵声を浴びせる動画を撮ってこいと無茶ぶりをします。
そこで見覚えのある姿の男が。
子犬を小脇に抱えた仮装している男は久保でした。
沢田の顔にぶっかけると宙に浮かび空へと消えていくのでした。
実はパーティ会場にヘリが突っ込む前に久保は霊界と繋がった犬ジェフにより命を助けられたのでした。
ジェフ自身、霊魂から発生した精子によって生まれたクラウド犬でしたが生殖能力を持っていました。(漫画家羽鳥の犬ハナを孕ましている)
つまりジェフこそがクラウドたちが探し求めていた進化を握る鍵だったのでした。
その肉体を残す事はできないとジェフはその場に残り久保を逃がしていたのです。
そして久保は新たにジェフとハナの子供をパートナーにしスキャッターとして生きていたのでした。
雑記
この漫画の怖いところはクラウドの存在がフィクションではないかもしれないという点です。
別に宇宙から飛来した精子により生まれた人間がいるというわけではなく、地球を裏から操っている存在がいるという点で。
政界、財界のトップクラスの人には我々一般人には知らない世界が広がっていて実は人口抑制の為に密かになにかされているかもしれない。
それは電磁波なのか、遺伝子組み換え食品によるものか、はたまた薬、ワクチンなのか。
現実ではそんな見えない敵を認識する事すらできませんが、本作では愛する人の為、世の為立ち上がるヒーローがいたという物語です。
これはリアルに考えると他のフィクションの敵よりももっと強大かもしれません。
実際パーティを襲撃し皆殺しにしましたがクラウドはまだまだ世界中に存在します。
恐らく人類の削減も止まらないでしょう。
現実社会では一石を投じる事もできませんが本作はそれらに対する反抗をテーマにしたものかもしれませんね。
目に見えない大きな存在に実は管理された社会。
新井英樹先生の漫画らしく随所に毒が散りばめられ人を選ぶような作品ですが、テーマとしては純愛を扱っている普遍的なものかもしれません。
新井英樹先生は童貞を書くのが大変上手いんですが今作はその中でも青々しかったですね。
ぶっかけから発展する恋なんて聞くとふざけてるのかと人には思われそうですが是非この作品を読んで欲しい!
読者にとって他の誰でもなくあなたがいてほしいというあなたを見つけられてるでしょうか?と突きつけられるような作品でした。
結構ガッツリネタバレしてしまったのですが、もしかしたらこの記事を切っ掛けにこの作品を手に取ってもらえる事を祈ります。
とんでもない設定だが語られるテーマは常に普遍的な愛の物語。
序盤で挫折してしまう方が多いかもしれませんが絶対最後まで読んだ方がいい作品です!
下ネタに耐性がない人でも是非! 87点