作品情報
作者 新井英樹
出版社 講談社
掲載紙 ヤングマガジンアッパーズ
巻数 全8巻
あらすじ
板前になるため北海道の高校を中退して上京する直前の石川凛は、行方をくらませていた「火の玉」欣二の消息を知り、再会を果たす。そこで同居人のレイラにボクシングの才能を見出される。
上京した凛は、就職先の料亭「天海」の近所に「中尾ボクシングジム」を見つけ、中尾と出会う。いきなり現役プロボクサーの新藤を相手にスパーリングを挑むなど、トラブルを起こしながらも才能を見出され入門する。
「天海」では、初出勤の日から無断で欠勤したことで一度不採用を言い渡されるも、その後のアピールによって何とか採用され、仕事の休憩時間に同僚に隠してジムに通う生活を続けながらトレーニングを重ね、プロボクサーの道を突き進んでいく。
Wikipediaより引用
感想 解説 考察など
今回は自分のボクシング漫画ランキング1位の作品を紹介したいと思います!
新井英樹先生の異色ボクシング漫画、SUGARです!
ある意味スポーツ漫画のようでそうではない変わった作品になっています!
読んでいて何とも言えないワクワク感が凄い作品なので早速レビューしいきます!
新井英樹先生の他の作品はこちら↓
主人公、石川凛の魅力 セオリー無視の天才
まずなんと言っても主人公の凛のキャラがかなり特異!
スポーツ漫画でありがちではある天才型の主人公ですがただの天才ではありません。
圧倒的天才。これが一番の特徴です。
普通の漫画であれば才能を見いだされ徐々に努力を重ねて才能を磨いていくパターンですが、今作の凛は最初から天才としての才覚を見せてくれます!
ボクシング経験者から見れば一発で世界が見えるほどの才能。
どんどんボクシングにのめり込んでいく凛は努力ではなく楽しんでボクシングで遊んでいる(真剣に)うちにデビュー前から世界チャンピオンになる事が間違いないだろうとボクシング界で騒がれるほど。
ボクシング歴3日でビデオをで見ただけの世界チャンピオンによる左のトリプルフックを即座に身に着け、さらに右まで追加しプロボクサーの桜井の自信を一発で打ち砕きます…
身体のバネ、柔軟性、吸収能力、スピード、どれも一級品ですでに美しさまで備えているレベル。
努力してコツコツと積み上げたもの目の前でぶち壊された桜井はそれ以降東洋太平洋チャンピオンになっても凛に対して嫉妬と引け目を感じる事に。100年に一人の大天才だと。
年齢を偽装してまで受けたプロテストでは、完全になめまくって参加。
10年に一度あるかないかのプロテストのスパーリングでノックアウト予告。
そして超余裕で実行。
審査員ですらとらえる事ができないくらいの強烈な見えないファントムパンチで対戦相手を一発でノックアウト。
ありとあらゆる表現をもってしても表しきれない天才。
この時点ですでに並みのボクサーでは相手にならないくらい完成されています。
どこまでも周りをなめくさった態度はボクシングだけではありません。
常にふざけて茶化して大笑い。
対人関係においても他人とはあえて一線を引いているように見えます。
本当は可もなく不可もなく対人関係を行うだけの器用さを持っていますが、わざとふざけるなどして本心を周りに見せる事はありません。
そしてこんな慇懃無礼な態度をとる一方、内面は非常に照れ屋で繊細。
その二面性もまた凛の魅力となっています。
もう一人の天才、中尾重光 天才が天才を見いださない
凛の他にも天才がおり、そして物語でも重要な役割のキャラ、中尾。
かつてプロ24戦24勝のパーフェクトな天才、現役時代は誰も勝てないと言われた天才中の天才でした。
しかし天才すぎて誰にも理解されない孤独を持ち、ボクシングジムを経営していますが凡人ばかりのジム生に興味を持っていませんでした。
そのあまりにも凄すぎる才能を持って凛が評するに、
「天は二物を‥‥」じゃ表現として甘過ぎ
天は中尾をギリギリヒトとするためにボクシングのみを 与えやがった!!
この漫画の中でもこのモノローグが一番カッコいいんすよ…
人としては幼児並みの知能。風俗狂い。日本語ですら怪しいレベル。
凛に言わせると人間性はまったくもって尊敬できないがボクシングに関してだけは天才でこの人に教わりたいと他人を見下しまくっている凛にそう思わせるほど過去のボクシングは美しかったんです。
中尾も天才であるがゆえに周りにどう賞賛されようとも自身の実力を理解してくれる人に出会えませんでした。
そして自身の全てとも言えるボクシングを失ってしまった為ずっと孤独でした。
しかし凛が現れついに自分に匹敵するほどの天才に出会います。
一発で凛の才能を見抜きます。
普通の漫画であれば元天才の師匠に出会い、教えられその才能を開花させる展開が待っているのですが、今作ではこの師匠ポジである中尾が凛を拒絶します笑
かつての自身に匹敵するであろう凛の才能を見抜きつつも否定してしまう所がいかに人間として欠落しているかという事を示していますね。
凛も中尾の才能だけを惚れ込み、「ボクシングだけ教えてよ」と中尾に師事します。
これも凛らしいセリフですね。
お互い天才であるがゆえに二人にしか理解できない次元のレベルまで凛のボクシングの才能はさらに昇華されていきます。
ここから先微ネタバレになるので注意!!
まさかの挫折。失われる自信
圧倒的な天才っぷりの為、どこのジムも凛と試合を組んでくれません。
スパーリング相手を探すだけでも苦労するほど凛の才能はプロデビュー前からボクシング業界に知れ渡ります。
やっとのことで見つけた4戦4勝のプロボクサー根本との試合が組まれることに。
相手の以前の試合のビデオを見た凛はその圧倒的な実力差を感じ完全にナメくさります。
しかしあまりに油断しすぎて開始4秒で相手のテレフォンパンチをよそ見して食らってしまい、世界最速KO記録で負けてしまいます。
完全に意識を失った凛は試合の記憶がなく自身が負けてしまった事を理解するのに時間がかかるほどでした。
プロ初試合で隠したから完璧に負けてしまい自身を失う凛。
果たして凛は自分のボクシングを取り戻せるのか。
ここから先は是非漫画で読むことをオススメします。
まとめ
他のスポーツ漫画にはない慇懃無礼で厚顔無恥、そしてそれを裏付ける最初から完成された大天才という魅力的すぎる主人公凛。
圧倒的な天才描写が最大の見どころです!
残念ながら掲載紙の廃刊で第一部完となりますが続きは週刊ヤンマガでRINという続編が開始されます。
こちらも非常に面白い漫画で新たなテーマ性を持った名作なのでまたご紹介させていただきます!
ボクシング漫画だけではなく全てのスポーツ漫画の中でこれが一番好きですね。
他を挙げるとすれば甲斐谷忍先生のワンナウツも好きですが。
美しいまでの才能をものすごい勢いで垂れ流す主人公!
圧倒的な天才を普通とは異なる描写で書き上げた名作!97点