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【映画】ルパン三世 カリオストロの城 宮崎駿監督が描く新しいルパン像 解説 考察 制作秘話や裏話など!94点

Yahoo映画より引用

作品解説

監督 宮崎駿
脚本 宮崎駿 山崎晴哉
原作 モンキー・パンチ
公開 1979年12月15日
上映時間 100分

あらすじ

宮崎駿監督にとって初の劇場監督作品となる劇場版「ルパン三世」シリーズ第2弾。盗み出した大金が偽札と気づいたルパンと次元は、偽のゴート札の秘密を探るため、カリオストロ公国へやって来た。そして謎の男たちに追われていた少女クラリスを助けるのだが……

Filmarksより引用

キャスト

  • ルパン三世 山田康夫
  • 次元大介 小林清志
  • 石川五ェ門 井上真樹夫
  • 峰不二子 増山江威子
  • 銭形幸一 納谷悟朗
  • クラリス 島本須美
  • カリオストロ伯爵 石田太郎

感想 解説 見どころ

今回はクレしんハイグレ魔王以来のアニメ映画の解説記事です!
クレヨンしんちゃんアクション仮面VSハイグレ魔王の記事はこちら↓

日本のアニメ映画といえば宮崎駿監督、宮崎駿監督と言えば、カリオストロの城を1番に推す方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
劇場公開が1979年(40年以上前!)にもかかわず今でも色褪せない魅力たっぷりの一作です!

まだスタジオジブリを興す以前の、そもそも長編アニメ映画初監督作品でここまでの作品を作り上げたのは脱帽ですね。

色々見どころや小ネタなどを解説していきます!

初監督作品にして現代にも通ずる作風を確立!生き物から機械まで躍動感あふれる動き!

初監督作品でありながらめちゃめちゃ宮崎駿感が出まくりなんですよね。
TVアニメ未来少年コナンとかやってたのですが、長編映画は初めてでこの躍動感は凄い!

特にこの監督は人の動きだけではなく個人的な監督の趣味もあると思いますが、機械系の動きがいきいきしてる!

序盤のカーチェイスなんか特にそう!

アニメーター出身なだけあって動画センスが半端ない!
漫画家の鳥山明先生手塚治虫先生が静止画で見せるようなキャラやモノが生き物のように動いている様子をアニメーションでしっかり表現しています。

宮崎駿監督はいきなり自ら絵コンテを書いてストーリーや動きを考えるのですが、その静止画での躍動感を動画に落とし込んでいます。

また今回はそんな魅力的なカーチェイスシーンから始まるのですが、なぜフィアット500なのか?
ルパンの愛車と言えばメルセデス・ベンツSSKってイメージの方が多いと思いますが今作では回想以外、登場しません。

deviantart.comより引用

フィアット500は初代テレビシリーズでもちょろっとしか出てなかった車です。
しかし、なぜ今回フィアット500がメインかというと作画監督の大塚康生監督の愛車がフィアット500だったからだそうですね。ちなみに初登場時クラリスが運転していた車、シトロエン2CV宮崎駿監督の愛車でした。

フィアット500は丸っこくてコンパクトな車の為、ルパンと次元がぎゅうぎゅうに押し合ってガンガン走り回り、より活き活きとした激しいカーチェイスシーンになったと思います。

また初代アニメシリーズには宮崎駿監督と大塚康夫監督に関わっている為そちらの影響もあります。
なのでルパンのジャケットもではなく初代の緑になっています。

宮崎駿が描くルパン三世。原作とは全然違う!?

モンキー・パンチ先生の描く原作漫画では、今のルパン三世のイメージと違いもっとダーティーでハードボイルドな雰囲気でした。今のように盗みの際に殺しはしないみたいなキャラ感ではなく、割と仕事の為なら普通に殺しています。しかも女性でも容赦なし。

しかし私たちが知ってるルパン三世は弱きを助け強きをくじくと言った義賊的なイメージですよね。
アニメシリーズでもコメディ色強めでしたが、カリオストロ版のルパンが今のルパンのイメージを確立したと言えるでしょう。

元々カリオストロを作るにあたって、宮崎駿監督は今までの古いルパンを描くつもりはなくどうせだったら新しいルパンを描きたい!という事で今のイメージである女性に優しくコミカルなキャラクターへと作り替えたそうです。その為ルパンの年齢を、クラリスに「おじ様」と言われるような比較的高めの年齢設定にしたそうです

「今はこれが精一杯」の名シーン
『ルパン三世 カリオストロの城』 – Copyright : TMS Tokyo Movie Shinsha

銭形警部も現在のイメージでは時にはルパンと共闘したり、ルパンにハメられて逃がしてしまい悔しがるようなコメディーリーフ的な存在ですが、原作ではかなりのエリートでルパンに対しても容赦がなく殺しにかかってきますしね。

ルパンと協力し合う銭形警部
『ルパン三世 カリオストロの城』 – Copyright : TMS Tokyo Movie Shinsha

劇場公開時はあまり売れなかった…

今では金曜ロードショーなどで何度も再放送されて高視聴率を叩き出す有名な名作となっていますが、公開当時1979年では宮崎駿監督自身も初めての監督作品で予算も少ない事もあり、大々的な宣伝もできませんでした。そのため他の映画に比べて興行収入もかなり少なく、監督自身大変ショックを受けたそうです。

当時はSEアニメ全盛時期だった為、今作の雰囲気ではあまり注目を集めづらいという事もありました。(同年、劇場版銀河鉄道999、劇場版宇宙戦艦ヤマトの公開、テレビ版機動戦士ガンダムの放送開始)

しかしアニメ関係者やアニメマニアからの評価は高く、再放送されるにつれてどんどん再評価されるようになり、ルパン三世の代表作とされるまで有名になりました

たしかに同年の劇場公開アニメ映画などに比べるとだいぶ雰囲気が違いますね。
その分今見ても色褪せない魅力があります

低予算で製作期間も限られている中での過密スケジュール!かなりの難産だった…

今作は初めに書いた通り、動画としての動きが細かく、躍動感に溢れたかなり質の高い作品ですが、制作時はかなりの過密スケジュールだったそうです。

1979年5月頃より制作が始まり脚本やプロットを完成させたのが7月、そこからやっと動画制作に入るのですがなんと締め切りは11月!

4か月で長編アニメ映画を作らなければなりませんでした!
今では考えられないスピードです…

今作は動画枚数約45000枚カット数も1450以上とめちゃくちゃ膨大な量だったようです…(引用元:ひたすら映画を観るブログ様)
もちろん制作陣は缶詰状態で1日中動画制作、当時はセル画だった為1枚1枚色を塗って背景と合わせて撮影して…といった今よりとても手間のかかる制作方法だった分かなり大変だったでしょう…

スタジオジブリを設立した後、年齢を重ねても自身の作品の動画や原画のチェック、さらに細かい演出、指示出しなど莫大な作業をこなす超人として知られていますが、もうすでにその能力をフルに発揮していたのでしょう。

しかしやはり無理なスケジュールだったため泣く泣くカットしたシーンなどもあったそうで、宮崎綾夫監督自身しばらく落ち込むくらいだったようです。
私から見たら十分ハイクオリティに見えますが、やはり後に世界の巨匠となる人は違いますね…

ストーリーに若干矛盾点あり?そこもまた考察の余地があり魅力がある!

この作品はよくストーリー展開にて矛盾点を挙げる方が多いようです

内容としては序盤でモナコの国営カジノから大金を盗み出すのですが、すぐに偽札である事に気づき「偽札じゃ意味がない」と全てバラまいてるのですが、なぜかその偽札の出所を探るためにカリオストロ公国へと向かいます。

この時点ではクラリスの事も思い出してないですし不二子の潜入も知らないはずなのでここに向かうという事自体、札束をバラまく部分と矛盾してしまいます。しかし無理やり理由を考えれば、

  • 偽札の製造自体を嫌悪して義賊的な動機で赴いた。(その割には不二子が盗み出した偽札の原板を欲しがる)
  • 原板自体を高値で悪人に売るつもりだった。(ヒーロー的なイメージの今作のルパンとしては違和感がある)
  • 再び偽札に出会ったことで、かつて若い頃にカリオストロに忍び込み偽札の秘密を暴けなかった事に対してリベンジする為。(これだと割としっくりくるかな?)

など色々考察する楽しみ方もあります。

しかし実際は脚本自体を宮崎駿監督が作成中にも関わらず、絵コンテ段階で改変したり気に入らない部分を削ったり新しい要素を足したり、納期が迫りまくってたり、大混乱の中制作した為に生じた矛盾だったようです。
上記に書いた通りかなりの超過密スケジュール体制だったためしょうがないんじゃないかなと思います。

他には銭形警部と機動隊がカップラーメンを食べるシーンやルパンと次元がカップうどんを食べるシーン。
一応本作の時代設定は1960年~1970年の間と言われていますが、カップラーメンが普及するのは1970年代後半です。なのでこの時代にないものとして矛盾してます!
スタッフの遊び心かもしれませんし、あさま山荘事件のオマージュでもありそうですね。

それでもこの作品自体の評判を落とすことがないのは長編アニメーション映画としてとてもレベルの高いものだからでしょう。
実際その意見を知るまで自分は気づきもしなかったです笑

ラストの名シーン、あまりにも有名になったセリフ。

カリオストロの城といえばやはりラストシーンの銭形警部のセリフが有名ですね!

シリアスな顔で上手い事言う銭形警部
『ルパン三世 カリオストロの城』 – Copyright : TMS Tokyo Movie Shinsha

「ルパンめ、まんまと盗みおって!」クラリスはおじ様は何も盗んでいかなかった、と庇いますが、
「奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です」

ルパンとの爽やかな別れと、コメディリーフ的なキャラだった銭形警部のギャップのあるセリフ。
セリフの間や演技なども完璧で余韻の残るいい終わり方を決めちゃってます!流石納谷悟朗さん!

個人的な不満

ほんと些細で個人的な不満があります。

それは五ェ門の出番が少なすぎ問題!

私自身、ルパン一味の中で一番好きなキャラが五ェ門なのですが今作では要所要所でカッコいいシーンはありますが次元や不二子に比べて大分地味です。
それから、五ェ門といえば女に興味がないよう装うくせに毎回と言っていいほど女に騙されたり利用されたりする癖がありそこが好きなんですよ笑(あとすぐ修行の旅に出ちゃう)

そこが五ェ門の魅力なんですが今作ではそういうのは一切なし。
まぁTVスペシャルとかが始まる前ですし時期的にもまだそういうキャラを確立していなかったといえばそれまでなんですが…

クラリスに「可憐だ…」を言ったくらい。一応カッコいいセリフも言ってます。「今宵の斬鉄剣は一味違うぞ…」など。

まぁこれには理由があって、当初宮崎駿監督はルパンと次元だけでストーリーを展開しようとしていたのですが、諸般の事情で不二子五ェ門を急遽出さなくてはいけなくなった為あまり目立つシーンを入れる余裕がなかったとの事でした

かなり個人的だし些細な事ですが、唯一の不満点が五ェ門の不遇です笑
なので私の好きなTVスペシャルは五ェ門がいい味出してる燃えよ斬鉄剣、アルカトラズコネクション、ロシアより愛をこめてです笑
私の世代的にもこの辺ですしねー。

小ネタ

  • 作中衛兵の集団が現れるシーンに未来少年コナンのコナンが映り込んでる。(他のシーンにも多数書き込みあり)
  • 銭形警部のパトカーになぜか埼玉県警の文字、反対側にはICPOの文字(銭形警部の所属は警視庁、インターポールは合ってる)
  • モナコでの脱出シーンにはよく見ると車の後部座席に五ェ門が乗ってる。
あうあう

不朽の名作、金曜ロードショーの定番!
何度見ても飽きない魅力と新しいルパン像を作り上げた至極の一作!
時を超えて愛される映画です! 94点

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